2006年09月09日

夏が来れば思い出す〜 完結編

さて悪夢のようなテスト期間を終了後、待望の夏休みがやってきた。

寮生の夏休みは夏休み初日に一斉清掃をした後やってくる。
汗だくになって部屋の隅々まで掃除。ガラスはもちろん、床や机・テーブル代わりに使っているワゴンなど全てクレンザーで磨き、果てにはゴミ箱まで磨きまくる。
これは夏休み終了後に部屋替え行われるので、次に来る人たちへの心遣いと、約3ヶ月間お世話になった部屋へのけじめの儀式のようなものだ(・・・と今になってそう思える)

それなりに頑張って掃除をし、寮監先生に「終了」の報告と点検依頼。
先生はお忙しいので、副寮監先生との2人体制でチェックをされる。
別に賄賂をお渡ししていたわけではないが(笑)、心なしか上級生の部屋のチェックは甘くしてくださる。先生方からの信頼と安心を勝ち取っていたことと、(今にして思えば)多少早く終わらせて、他の1年生だけの部屋のお手伝いをさせたかったのかもしれない。
実際いつもの年よりも多くの2年生が在寮したので、2年生1人に対して2部屋のお世話係をしていたようなものだった。

余談になるが副寮監のチェックはすごかった。
「完璧!」と思ってお呼びすると、に〜っとしたかと思うと「ここんところ」といってどこからともなく歯ブラシを取り出し、サッシの溝をゴシゴシと磨きだす。「ほら〜」と見せられた汚れは一瞬部屋の住人達を凍らせる。そして黒くなった歯ブラシを手渡され、きれいになるまで磨かせる・・・という、本当の意味ですんばらしく徹底された掃除を余儀なくされた私たち。
そのチェックを頂いてはじめて帰省の準備に取り掛かれるというわけ。

さてその年は珍しく比較的早く終了した私は、いそいそとゆうこちゃんを訪ねた。一緒に映画を楽しんで、その後いっしょに帰省する約束をしていたのだ。
行った先は歌舞伎町。新宿コマ劇場に並ぶおば様方を横目に、話に夢中になって闊歩した。
「そうだ、何時くらいに帰るのか?電話を入れなさいって言われてたんだ」と、近くにあった公衆電話(今や死語?)を見て思い出した私。
任務無事完了。掃除も完璧だし、映画も楽しんだし・・・さて帰るか!と思った瞬間、何かが違った。

「ねぇ、バックどうしたの?」
「へ?」・・・ゆうこちゃんに指摘されて、掃除で汗まみれになった着替えが入ったバックがなくなっていたことに気付く。
「あ゛〜〜〜〜 さっきの電話ボックスだ!」

慌てて戻った電話ボックスに荷物は・・・なかった。

最悪なことに、ここに帰りの新幹線のチケットを入れておいた。
もしもチケットを失くしたら・・・今日の帰省はない。
寮に戻るわけにも行かず(出寮・帰省届の書類を提出していた←そのくらい厳格な学生寮。学生の単純さと寮の厳しさから特例が認められることはないと思っていたし、何よりも食事がないのでひもじくていられない)顔面蒼白、半べそ状態になっていた。

「どうしよう?」
「・・・交番だ!」

そして近くの交番に飛び込んだ。
「バックを公衆電話に置き忘れました!」と、ああこんなところでも(一見)しっかりモノの私がいた。
「名前は?」
「住所は?」
「何が入っているの?」
「どこへ行くつもりだったの?」
・・・まさに訊問。すでにテンパっていたにもかかわらず私の頭は真っ白状態。警官の声も聞き方も本当に怖かった。

後で聞いたところ私は気付かなかったが、ゆうこちゃんはそこに先ほどすれ違った男子学生2人と、見覚えのあるバックがあることにすでに気付いていたらしい。

そして奥から私の目の前に、警官は見覚えのあるバックを置いた。
「ここにいる2人が届けてくれた。お礼を言いなさい」
「ありがとうございます。わぁ〜〜〜〜〜〜〜ん(号泣)」

そのおまわりさんは男の子たちがその場を去った後、先ほどの声とは打って変わって諭すような声で話してくれた。
「入っていた中身が中身なので、(簡単な着替えと新幹線の片道チケット)
 家出娘かと思ったので、厳しく言ってしまった。申し訳なかった。」

・・・冷静に考えればそりゃそうだよね〜 ここは歌舞伎町、時は夏休み。
そういう人たちが多く訪れてもおかしくはないかもしれない。
「中身をチェックさせてもらった」と言われ、急に我に返って赤面。
え〜〜(自分でも嫌だと思う)あの汗臭い着替えをみられた!?

激しく自己嫌悪になりかけたとき、急にフレンドリーに語りかけた警官が。
「そっか・・・S女子大の寮生か・・・。ほんのちょっと前まであそこの管轄だったんだよ。
 ヘンな痴漢が出てただろ?露出魔の。苦情を何度ももらっていたよ。
 夏になると出るんだよなぁ〜 ちょっと収まっていたと思っていたのに。
 結局自分が行ったんだよなぁ〜。しばらく見ないだろ?
 行くべきところに連れて行ったからさぁ〜」

・・・そっか・・・結局警察のお世話になったんだなぁ〜、あのおっさん・・・と、妙な感慨に浸り、頭をなでられるように(実際にそんなことはされてないけれど)して交番を後にする。
なんだかどっと疲れて、本当はもっと遊んで変える予定を早めに切り上げた(ような気がする・・・)。


家出娘と間違えられたのもショックだけど、かばんの中身を見られたほうがもっとショックで口数も少なくなった私。何とか気を盛り上げようと、いろいろと話してくれたゆうこちゃんの表情が懐かしい。(話の内容は覚えてないけど⇒ごめん!)
もしかしたら渦中の痴漢親父のお蔭で、おまわりさんにちょっとだけ親身になって面倒を見てもらったんだなぁ〜と、今書いててそう思っている。


学校の開始は10月から。
その前日に露出魔親父の顛末を、寮内に広めたのはこの私。
破竹の勢いで広まっていったのは、想像に難くないことだろう。もちろん、噂を広めた当の本人が家出娘に間違えられた事実は語られることはなかった。


今は昔、これもまた実話である。
posted by torefoil company owner at 00:00| Comment(4) | TrackBack(0) | 7F 好奇心の部屋 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
その‘露出魔オヤジ‘は、
今頃、‘露出魔ジジィ‘になっているのでしょうか・・・?(遠い目)
Posted by みくん at 2006年09月09日 19:47
力作でしたね!すごい!

私ね、学生のとき
地下鉄に指を挟まれて気絶しそうにいたくて駅事務室にいったら
しょうこさんが
この警察でされたように尋問されました。
キセルと間違われたみたい。

シップもらっただけだけど
なんかよかったね、カバン
でも着替えみられるのが恥ずかしいって

ああ懐かしい感覚。
ありがとう、恥じらいを呼び起こしてくださって!
Posted by ベティ at 2006年09月09日 22:16
Mika
 そうそう、出たり入ったりして露出ジジィと化していることでしょう。
 入っている間はどうしてたんでしょうね?・・・なんて、余計なことを考えちゃいました。
Posted by しょうこ at 2006年09月10日 01:50
Bettyさん
 指は大丈夫だったのでしょうか?
 「学生=キセル」の構図、確かに多いけど、最近特にその詰問の怖さを感じます。
 ホント怖かったですよね〜 体験したものだけが語り合える・・・のかも?

 そう、当時私も若かった(爆笑)
 洗濯したてのものならまだしも、あのぼろ雑巾のような着替えを見られたとあっては・・・
 今ならどんな反応をするのでしょう⇒私。
 きっと逆ギレして警察に当り散らすかな?いやいやアサーティヴな言い方で、ちくりと
 さしてしまうかも。これって一種の職業病かもしれません。
Posted by しょうこ at 2006年09月10日 01:57
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